イマヲイキル
岐阜県・岐阜市
醤油蔵元

山川 晃生

「こだわりの先に見えたもの、手にしたもの」

故郷に戻ったとき、そこに「故郷のしょうゆ」はなかった。
スーパーには大量生産の規格品が並んでいた。
それでも本物は売れる。そう信じていた。ならなぜしょうゆ蔵の9割が廃業してしまったのか。誰もが手を抜かず、本物を作っていたのではないか。必要なのは由緒正しさではない。そのものがうまいと言われ求められる、主役になれるしょうゆだ。
商品開発を繰り返し、他社を見習い、異業種を模倣した。企画を中断することもあれば、ブームに恵まれることもあった。「しょうゆ味のアイス」の断念から「アイスにかけるしょうゆ」が生まれ、脚光を浴びたように。

品質へのプライドと売る努力。その交差の中でいくつもの商品を作るうち、次第に本当に向かい合うべきものを知った。
しょうゆは手段に過ぎず、その向こうにそれはあった。こだわりから自由になった今、しょうゆという確かなツールを手にして、山川は1つひとつの「食卓」と向かいあう。そこに並ぶうまい料理を支えるために。

2011.10.25 取材
文_近田 全史 / 写真_ミゾグチ ジュン

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