▼力添えいただいたイベント
NEGI PON 「とうふ。ぽん。」
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イマヲイキル
京都府・京都
豆腐職人
西村 良之
「お客さんに届く豆腐が、いつでも同じであるために」
毎日、豆腐を作る。その作業は同じように見えて違う。温度・湿度・天候・にがりや豆の状態。「この年になってやっと、そういうことを考えられるようになった」。
どの町も同じだと思っていた若いころ、大都市で料理人を目指していた。その夢が断たれたとき、同じ「食」の道として、故郷・京都の豆腐屋に勤めることを選んだ。最初にぶつかった壁は、出来上がった豆腐を切ること。包丁捌きには自信があったが、柔らかい豆腐は勝手が違った。お客さんのためにきれいに。仕事としてすばやく。試行錯誤は半年以上続き、それから10年が経ったが、今でも「とうふはわくわくとドキドキをくれる」。その言葉は豆腐への探求心と責任感に彩られている。
工房の窓からは鴨川の桜並木が見える。すぐに来る春を思いながら、「花が散る姿が好きだ」と言う。
毎年、桜は咲く。その花は同じように見えて違う。繰り返す京都の風情が彼の姿に重なる。
2012.3.19 取材
文_近田 全史 / 写真_ミゾグチ ジュン