ABARERU.jp

大野 習平

「旅人を迎える。そして見送る。」

中学生の頃から旅の宿泊はずっとユースホステルだった。
その魅力は、訪れる見知らぬ旅人同士が時間と空間を共有する宿であること。ここで生まれる縁には人生を豊かにするきっかけがある。いつしか自分にもこの場をつくりたいと夢見たが、素人には叶わぬことだと思った。転機は30才で取得したバイクの免許、その最初の旅で訪れたユースホステルだった。そこはごく普通の主婦が同じ夢を抱き実現させたのだと知った。夢は叶う、それからは理想の姿を求め各地のユースホステルを巡った。だがいつまでも実現させる決断をできずにいた。
人生の折り返しに達した時に思った、この夢をいま叶えなければ後悔をすると。

人生という旅にも宿が必要である。
この宿にはいろんな顔の旅人が集う。一宿の縁が、明日行く道を変えるかもしれない。迎える側になった今でも同じひとりの旅人として、ともにみんなで語らう。そして朝、旅立つその背中を見送る。
いつかその旅人がたくさんの思い出を語りに再び訪れるのを、ここ桜が舞う京都でいつまでも待っている。