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イマヲイキル
山梨県・勝沼
ワイン醸造家
若尾 亮
「まずは、10年。きっと何かが見えてくる。」
東京で音楽活動をしていた。日本各地でライブをしたり、仲間と好きなことを思い切りやり抜いた10年。30才を目前にある選択を迫られた。一つは定職に就きこのまま音楽を続けること、もう一つは中学から縁ある女性と故郷に帰ること。これは、けじめをつける人生の転機だと感じ一緒に帰ると決めた。そして、義父の仕事を継ぐことになった。
ワインをつくる、それは自然の絶え間ないサイクルに加わること。ぶどうと人生の時を共有し、その実りをワインにする。ぶどうは生きている、だからこそ毎年さまざまな魅力をその実に宿し、ワインをつくる新たな挑戦とイメージを授けてくれる。
ワイン、それは音楽活動に通じる。ライブでオリジナル曲を披露するように、このワインに自らの世界観を表現する。ワインは、この手で思いを込め創り出す作品であり、その創作は10年、20年と終わりなく繰り返される。養子に入り継いだワインの道、これからもぶどうとワインに向き合いともに歩み続けることが、この勝沼の地でひとつの歴史を築いてきた若尾の姓を真に継ぐことだと感じる。
2012.7.27 取材
写真・文 ミゾグチ ジュン